新型インフル対策

新型インフル対策

 新型インフルエンザ対策の切り札となるワクチンを誰にどう接種するのか、国内でも早急な議論が必要だ。

 ◇政府は、必要な新型インフルエンザワクチンの量を5300万人分と見積もる。

 ◇感染拡大が止まらぬ中、誰に、どういう順番で接種するか、早急に議論が必要だ。

ワクチンの接種順議論を

 沖縄県で15日、慢性腎不全で人工透析を受けていた男性が、新型インフルエンザに感染して死亡した。世界保健機関(WHO)が6月に世界的な大流行を宣言してからも、新型インフルエンザの感染拡大の勢いは止まらない。感染者は6日時点で世界17万7457人、死者は1462人に達した。国内で、インフルエンザが本格化する冬場には、感染が一気に拡大し、社会機能にも悪影響を与えることが懸念される。

 こうした中、各国が切り札として期待し、対策の柱に位置づけるのがワクチンだ。感染を防げない治療薬と異なり、感染そのものや、重症化を防ぐ効果が期待できる。海外の一部では来月にも接種を開始する見通しだ。国内でも製造が始まっており、政府は10月にも接種を始めたい考えだ。

 しかし、ワクチンの種になるウイルスの増殖能力が予想よりも低く、WHOが当初試算した49億回分という世界全体の生産量を達成するのは難しい情勢だ。英国やオランダ、イスラエルなどは、全国民分を確保することを表明、ワクチンを購入するため、「メガファーマ」と呼ばれる多国籍の大手製薬企業と協議に入るなど、争奪戦が始まっている。

 「国内の製造分だけでは足りないワクチンは、輸入して確保する」

 こうした争奪戦に遅れまいと、舛添厚生労働相は、総選挙へ向けた応援で各地を巡りながら、繰り返し訴えている。

 政府は、ワクチンの必要量を5300万人と見積もり、製造が追いつかない約2000万人分を輸入したい考えだ。

 しかし、誰にどういう順番でワクチンを接種するのか、肝心な議論は置き去りになったままだ。輸入の根拠にもなる5300万人分という数字が、どう算出されたかも明らかではない。

 幸い、今までのところ、新型インフルエンザの感染者の多くは軽症のまま治っている。しかし、犠牲者のほとんどが高齢者の通常の季節性インフルエンザと異なり、米国などでは健康な成人が肺炎を重篤化させて死亡するケースも出ている。妊婦や、糖尿病、ぜんそくなどの持病を持つ人は特に重症化しやすいことも分かってきた。WHOはワクチンの接種対象としてこうしたリスクの高い人たちを優先すべきだと勧告。同時に医療体制を維持するため、医療従事者への接種も必要としている。

 日本もこうした勧告や毒性、感染力を勘案して、ワクチンを誰に接種するか議論を急ぐ必要がある。

 米国は、学識者のほか、市民代表も参加した公開会議で議論し、優先接種する対象を妊婦や乳児のいる家庭、感染者が多い若年層、持病のある人など1億5900万人と決めた。

 今冬の流行前に、国民全員分のワクチンを準備することは難しいだけに、日本でも、議論の過程を公開して、国民が理解し合意できる仕掛けが欠かせない。

 また、海外のワクチンは免疫増強剤を使うなど国産と製造方法が異なる。特例承認で緊急避難的にワクチンを輸入する場合、限られた時間で安全性をどう確認するかは大きな課題だ。

 さらに、WHOが途上国へのワクチンの拠出を呼びかける中、国内でワクチンの製造能力があり、医療体制も充実した日本がやみくもに輸入するのは、「国際社会から驚きをもって受け止められる」(進藤奈邦子・WHO医務官)という批判もある。

 地球規模で大流行する新型インフルエンザに立ち向かうには、ウイルスの収集など国際協力が欠かせない。政府は、国際的なバランスも考えながら、ワクチンの議論を進めてほしい。

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投稿者: 日時: 2009年8月24日 20:08 | パーマリンク |TOPページへ   ▲画面上へ